ハルヒをいまさら。

決断主義トークラジオAlive2 ビューティフル・ドリーマー
東浩紀宇野常寛によるトークラジオについての雑感。
最後の方で駆け足でやってたハルヒに関するトークが気になった。
どちらかというと宇野氏の方に見解が近いためどうやら5%側の人間になるらしい。
個人的に「涼宮ハルヒの憂鬱」(小説およびアニメ)はハルヒが日常を肯定する物語だと思ってる。
少なくともなんで俺のとこには宇宙人や未来人がこねぇんだよというような感情よりも
SOS団の何も起きない日常(そしてそこにある青春の日々)にこそ心奪われる。
そんなに特殊だとは思わないんだけどなぁ。


ついでにハルヒについてだらだらと。
個人的には「涼宮ハルヒの憂鬱」は最初の1冊目で終わっておけばよかったと思ってる。
はっきり言ってその後の話は蛇足だろうと。
そう思う理由としては"憂鬱"でハルヒが退屈なつまんない日常に帰ることを選択した、
というよりキョンにより特殊でないハルヒそのものを肯定されたことを受け入れてしまったと考えられるからだ。
そうであるならハルヒはこれまでどおり一般的な人間に起こしうる限りの特異的な行動を起こしながらも
日常を生きていく物語しか後には残されてないと思う。
だから後はそれぞれのキャラクターを生かした、ハルヒにとっては退屈な日常、
キョンとその他の人々の非日常という分離した物語のレイヤーを重ねる物語のみが再生産されるだけにならざるを得ないと思う。
そうなると最新作である"分裂"はそれに対抗するものを作ろうという試みなんだろうかと思う。
登場人物が進級し、新キャラ、それもハルヒと対抗する形のモノを出してきた以上は
ハルヒがついに非日常(憂鬱以来だっけ)と出会うという展開になるんだろう。
そうなるとハルヒはまた日常と非日常のジレンマに直面せざる得なくなる。
そうなると"憂鬱"はなんだったんだということになりかねないと思うのだけれど。
下手すれば憂鬱の別バージョンで終わってしまうだけになる気がする。
というかいったい新刊(驚愕)はいつ出るんだ。もう半年待ったのだけど。


ついでにいまさら"キョン=異世界人"という話をしてみたり。
別にこれそのものは目新しいものではないけど多くのケースは"異世界=小説を読んでいる読者の世界=現実"として
異世界人=読者とおいて、物語内の語り部であるキョンを読者と倒置する形で異世界人としている。
これに関してはそう複雑にしなくてもいい気がする。
まず小説「涼宮ハルヒの憂鬱」という作品は角川スニーカー大賞を受賞した作品であり、
最初の段階では"憂鬱"単独で完結する物語として作られていると思われる。
そうであるならSOS団に宇宙人、未来人、超能力者が存在していて異世界人がいないはずがない。
そうであるなら異世界人=キョンと単純にというか短絡的に考えてもいいと思う。
ただそれだけではなんなので少し考えてみる。
ラストの二人だけの閉鎖空間/新世界でキョンは次のように言っている。

「そうじゃない。この世界でのことじゃないんだ。元の世界のあいつらに、俺は会いたいんだよ」 p284

そういうキョン言葉に対しハルヒは「意味わかんない」p284(アニメではここでつないでいた手を振りほどく)と答え

「あんたは、つまんない世界にうんざりしてたんじゃないの?特別なことが何も起こらない、
普通の世界なんて、もっと面白いことが起きてほしいと思わなかったの?」  p284

キョンに問いかける。
ここでハルヒキョンが自分と同じように退屈でつまんない日常から逃れることを望んでいると考えている。
これは以前にハルヒは自分がちっぽけな存在であり、自分が特別な存在ではないことに気がついたということをキョンに告白しているものと同様だ。
つまりハルヒキョンが自分と同じ世界の住人であると信じていたと思われる。
ハルヒの望みは退屈でつまんない世界(元の世界)から特別なことがおきる世界(新しい世界)へいくことである。
それに対しキョンは新しい世界を否定し、つまんなく退屈な世界を選択/肯定している。
その瞬間に元の世界でハルヒにとってあるべき世界(新しい世界)で生きていたはずのキョン
実は異世界(元の世界)の住人であることを突きつけられていると考えられる。
(だからこそつないでいた手を振りほどき「意味わかんない」と答える。)
以上のように新世界における唯一の伴侶であったキョンハルヒの前に異世界人として現れたと考えている。
だからといってなんでもないんだけどね。


ついでのついでにアニメの話。
実はアニメ13話のなかで"サムデイ イン ザ レイン"が一番好きだったりする。
あの話のハルヒが一番いい、特にラストの振り向きざまが。
ついでにTV版の前話孤島症候群(後編)の予告とキョンが目を覚ましたときのハルヒの挙動(驚いて固まる)の
仕掛けあたりは個人的にはかなりぐっと来たんだけど。
それはさておき、この話は原作者の谷川流がアニメ用に書き下ろした作品である。
ここで描かれているのはSOS団の普通の一日だ。
ハルヒは突然勝手なことをいい、みくるがそれに振り回され、小泉がそれを笑顔で許容し、
キョンがやれやれとそれに従う。そして長門は本を読む。
このありふれた日常以外に憂鬱の先の世界はないとおもうんだけど。